SSブログ

映画 『パリ、ジュテーム』 [映画 は行 *Movie]

フランスをはじめ、世界各国から集まった18人の監督が手がけた、
一話あたり5分間のオムニバス映画 『パリ、ジュテーム』。

ギャスパー、ジュテ~ム♪ の私は、彼の出演作をお目当てに見に行きましたが、
その他のいづれの作品も思いのほかドラマティックで素晴らしい映画でした。

ひとつひとつが5分間と短いためか、それぞれの監督の個性のエッセンスがギュッと詰まっていて、
忘れがたい印象を与えてくれるものばかりでした。
以下は、その中でも特に心に残った作品です^^

□■ セーヌ河岸 ■□
監督、脚本: グリンダ・チャーダ
若い女性ザルカ: レイラ・ベクティ
若い男性フランソワ: シリル・デクール

セーヌ川のほとりで友達とナンパ中、
フランソワはひとりのアラブ系の女性ザルカに出会い心惹かれるというもの。

ザルカはイスラム教徒なので、特有の黒いベールの下に、美しくたゆたう黒髪を隠しているわけで、
それを思いがけず見ることになったフランソワが、「なぜ隠すの?」と問うところが良いですね。
とかく美しいものは強調したり露わにする風潮がありますけれど、
それをあえて隠すという奥ゆかしさに、逆に官能をみる時もありますよね。
まあ、このザルカの場合はそんな意図はないのでしょうが、
そんなところに魅力を感じた青年フランソワのデリケートさがいいなと思ったのでした。
神様がフランソワだけに見せてくれた美しい贈り物(黒髪)…ロマンチックですね☆

□■ マレ地区 ■□
監督、脚本: ガス・ヴァン・サント
マリアンヌ: マリアンヌ・フェイスフル
エリ: イライアス・マッコネル
ガスパール: ギャスパー・ウリエル

ある日、街の印刷所に、英国人のマリアンヌが、通訳の青年ガスパールを伴い来店します。
ガスパールはその店で働く青年エリを一目見るなり興味を覚え、
自らの想いを伝えるというストーリー。

その想いを一方的に伝えている最中、カメラがガスパール(ギャスパー)だけを追っていて、
短い間でしたが彼の美貌を堪能できました、ありがとう!ヴァン・サントさん(笑)
そしてガスパールが語り終えた後の、エリのある事情というのか、
“オチ”がついているところも面白いアイディアですよね、あれによって、
更に強くガスパールの気持ちが伝わったんじゃないかなと思います^^
個人的にはガスパールは電話番号を残さないで欲しかった…
その方が、エリがこの出会いを逃すまいとするあの衝動を、
もっとドラマチックに感じることができたと思うのです。
また、大好きなアラン・ドロンの映画『あの胸にもういちど』で共演した
マリアンヌ・フェイスフルが出ていたのも嬉しかったですね~、
この映画での彼女は、皮のライダーズスーツでバイクを飛ばし、
ドロン演じる愛人に会いに行く姿が艶かしくてかっこいいんですよね(*^^*)

□■ 16区から遠く離れて ■□
監督、脚本: ウォルター・サレス、 ダニエラ・トマス
アナ: カタリーナ・サンディノ・モレノ

パリ郊外の団地暮らしのアナは、毎朝まだ赤ん坊のわが子を預けて、
遠く離れた高級住宅街である16区へと向かいます。
彼女はその豪華なマンションの一室で、ベビーシッターの仕事をしているのでした…。

これも、忘れられない、じんわりとした何かが心に残る作品でした。
わが子を食べさせていくために、別の子供の面倒を見ざるをえないという事情と、
お仕事先の赤ちゃんをあやしながら、遠く遠く離れて眠るわが子に、
ふと想いを馳せるところが切ないですね(p_;)
電車を乗り換えたり、地下鉄の構内をひたすら進んでゆくアナの姿を映し出して、
郊外と16区との距離感を印象付けたあたりも素晴らしいです。

□■ ヴィクトワール広場 ■□
監督、脚本: 諏訪敦彦
スザンヌ: ジュリエット・ビノシュ
カウボーイ: ウィレム・デフォー
スザンヌの夫: イポリット・ジラルド

カウボーイの存在を無邪気に信じていた最愛の息子を一週間前に亡くしたスザンヌ。
ある夜、息子の声を聞き飛び出した広場で、息子に会いたいか?
と尋ねるカウボーイ姿の男に出会います。

ジュリエット・ビノシュとウィレム・デフォーとは豪華なキャスティングですよね、
私としては18話中最も豪華な組み合わせだったと思います。
セットや撮影も大掛かりだったようですよ。
憔悴しきった様子の母親の前に、馬にまたがったカウボーイが、
とても似つかわしくない広場に忽然と現れるなんて、
おとぎばなしめいていて、哀しいけれど素敵なシチュエーションでした。
息子が、無邪気に母親にカウボーイの存在を示したんじゃないかな、
と思うとその子供らしさが微笑ましいですね。
亡くなってしまったけれど、苦しまずに天国にいると、
母親が知っていくらか心安らぐ場面も救いがあってよかったです。

□■ エッフェル塔 ■□
監督、脚本: シルヴァン・ショメ
女性のマイム・アーティスト: ヨランド・モロー
男性のマイム・アーティスト: ポール・パトナー

パントマイムを演じることが人生のすべてのある一人の男。
不審者と間違われて入れられた留置場で、
女性のマイム・アーティストを運命的な出会いを果たし、
やがて二人の間には可愛い男の子が生まれました。

ショメ監督はアニメ作品で数々の賞を受賞されている方だそうで、
だからなのか、とてもファンタジ~溢れる作品でした。
登場するパントマイマーは、見た目は美しくはないですが(;^^)
とにかくその動きに惹きつけられるものがありました。さすがはアーティストですね。
コミカルだけれど、ちょと切ないものを感じるところがあって…
こういうのをいわゆるエスプリが効いてると表現してもいいのでしょうか。
アート映像とも言いたいようなお洒落な作品でした☆

□■ 14区 ■□
監督、脚本: アレクサンダー・ペイン
キャロル: マーゴ・マーティンデイル

アメリカから一人旅にやってきたキャロルの、パリでの“特別な一日”。

なぜか分かりませんが、これを観終えて涙が止まりませんでした。。。(T_T)
この旅行のために2年間もフランス語を勉強して、
真面目に働いて貯めたお金でパリへ一人でやって来たおばちゃん…
つたないフランス語での“パリ日記”が読み上げられるところも泣けました。
もうお歳もお歳なので、旅先でのロマンチックな出会いとか恋とかは諦めてるのだけれど、
パリの小さな公園で神秘的な体験をするのです。
さまざまな出会いと愛をテーマとして描かれているこの短編集の、
中でも一番価値のある素敵な出会い&パリからの贈り物を貰ったのが、
彼女なんじゃないかなと思います。
この作品のペイン監督は、この映画の短編のひとつ『ペール・ラシェーズ墓地』で、
オスカー・ワイルドの亡霊役で出演しているのですが、なかなかのハンサムさんなんですよね^^
そんな彼が、このようにひとりの年配の女性を、優しく温かい視点でみつめているなんてステキ!
好感度大です♪

その他、コミックっぽいテイストの吸血鬼モノで、
イライジャ・ウッド出演の『マドレーヌ界隈』とか幻想的でよかったですし、
パリの小さな行きつけのレストランでの、ある熟年夫婦の別れを描いた『カルチェラタン』なども面白かったです。
このエピソードでは、ジェラール・ドパルデューがちょい役なのですれど、
さすがの存在感で、鼻…(違) 華を添えていました。

公式サイト→http://www.pjt-movie.jp/


nice!(6)  コメント(8)  トラックバック(1) 
共通テーマ:映画

nice! 6

コメント 8

kurohani

ご覧になったのですね♪いちいち思い出しては頷く事しきり!14区のおばちゃん素敵でしたね♪アメリカ人はアフガン・イラク侵攻後全員悪者になってしまった感がありますが、実際あんな感じの素朴な良い方もいっぱいいらっゃいます。何かそれが嬉しかったな。オスカー・ワイルド役がこの監督だったのかぁ、、。『エッフェル塔』のパントマイム夫婦も最高でしたね!アートへのオマージュって感じがしました。『16区から遠く離れて』の移民のベビーシッター悲哀とたくましさにもぐっと来ました。『セーヌ河岸』もちょっとそんなテーマ、でも繊細でロマンティックでしたね。ギャスパー君の『マレ地区』はやはり良かったですね(笑)ヴァン・サントうまい。でも一番泣けたのは『ヴィクトワール広場』!ミカエラさんらしい素敵な感想ありがとうございます♪長々失敬です。
by kurohani (2007-03-21 21:37) 

ミカエラ

■kurohaniさん、こんにちは♪
コメントありがとうございます~。

>>アメリカ人はアフガン・イラク侵攻後全員悪者になってしまった感がありますが、実際あんな感じの素朴な良い方もいっぱいいらっゃいます
↑kurohaniさんはNYにお住まいだったことがあるのでしたね、
居住経験者ならではのご意見ありがとうございます^^
私もアメリカ人ってあまりよい印象がないんですけれど(;^^)、
911のテロで夫を亡くしたにも関わらず、
侵攻に強く反対なさっている奥様の姿を追ったドキュメンタリーを観た時は、
米国人が皆一様に、報復を望んでいるわけではないということを思い知らされ考えさせられました。
多角的に報道することは大切ですよね。

>>ギャスパー君の『マレ地区』はやはり良かったですね(笑)ヴァン・サントうまい。
↑はい~(*^^*) ギャスパーが青年に語り続けている最中、
ずっとギャスパーを長回し(って言うのでしょうか)していてもう最高でした♪
できればカメラ目線で語りかけて欲しかったですわ~(←芸術性無視)

>>でも一番泣けたのは『ヴィクトワール広場』!
↑ほんと泣けましたね…最後に『カルチェラタン』に出てきた女性と目が合って、
哀しげな瞳で微笑むところなど、ビノシュの演技は素晴らしかったですね。
それから、無骨な顔つきのデフォーも死神然としてはまり役だったと思います(笑)
by ミカエラ (2007-03-22 16:59) 

ミカエラさまこんにちは。
私も14区を観終えて、涙が止まらなくなっちゃいました。
なんだかじわじわと後から胸にくるものがあって。

ヴィクトワール広場、
>おとぎばなしめいていて、哀しいけれど素敵なシチュエーション
ってのにとっても同感です。
切なくて良いお話でしたよね。
by (2007-03-25 15:52) 

初めまして。
コメントとTBありがとうござます。

ミカエラさんはちゃんとレヴューされてて素晴らしいです。
私なんかちょこちょこっとって感じですもの(^^;)
個人的にはトム・ティクヴァ監督の10区「フォブール・サン・ドニ」が好きなんですけど、やっぱりウォルター・サレス監督の16区「16区から遠く離れて」やシルヴァン・ショメ監督の7区「エッフェル塔」とか忘れられないですね。
個々に監督の個性が出ていて実に見応えのある作品だったと思います。
今度は東京23区でやって欲しいなぁ~って感じかな。
by (2007-03-25 23:14) 

ミカエラ

■mikaさん、こんにちは(^^)
コメント&niceいただきましてありがとうございます~。

>>私も14区を観終えて、涙が止まらなくなっちゃいました。
↑おお、そですか! 良かった、私だけじゃなかったんですね(T▽T)
普通、キャロルおばさんくらいの年齢の女性ですと、団体旅行とか、
気の合うお友達と廻ったりするのでしょうけれど、
あえて、挑戦ともいうべき独りで旅をしようとするところが偉いと思いました。
一生懸命、フランス語を勉強したのに、パリっ子に英語で話されるところとか、
ちょっと切ないんですけれど(;^^)
だからこそ、努力が実ってパリにてステキな体験ができたのだと思ってます。

…ところでmikaさん、赤いトレンチは買われましたでしょうか^^
私はこれから本気で探して買いますよ~(笑)
by ミカエラ (2007-03-26 18:01) 

ミカエラ

■トチオさん、こんにちは(^^)
コメント、そしてTBもありがとうございました~。

>>10区「フォブール・サン・ドニ」が好きなんですけど
↑ナタリー・ポートマン出演のですね。
学生のトマがショックのあまり、ふたりの思い出が走馬灯のように脳内を駆け巡るところが凄かったですね(@_@)
撮影にどれだけ多くの時間を費やしたのか考えると、贅沢な作品だったな~と思えてきます。

>>今度は東京23区でやって欲しいなぁ~って感じかな。
↑そうですね~、パンフに掲載されていた対談で諏訪監督等もそのように仰ってましたね。
実現したとすると…『東京タワー』『隅田川河岸』そして『ヒルズ界隈』あたり必須でしょうか(笑)

ところで、トチオさんのエンペラ~~のアイコンを観ていたら、
なんだかとっても『ハッピーフィート』が観たくなってきました(*^o^*)
http://wwws.warnerbros.co.jp/happyfeet/
by ミカエラ (2007-03-26 18:02) 

megumi

基本的にムスリムの人達は、

とても真面目で、優しい方が多いと思います。

コーランを背負いながら、生きているからでしょうか?

そこに美を見いだす:::共感します//
by megumi (2007-03-28 20:30) 

ミカエラ

■megumiさん、こちらにもコメントありがとうございます(^^)

>>基本的にムスリムの人達は、
とても真面目で、優しい方が多いと思います。
↑私もそう思います。一部の過激な信者(と言うべきか否か…)の行いのために、
悪いイメージがつきまとうのでお気の毒ですよね。

この映画の中でも、女性の家族が登場しまして、
単なる男女の出会いと恋愛を描いているのではなく、
異種、異文化の理解とか親和をもテーマとしているとも取れました。
詳しくは、megumiさんもどうぞ映画かDVDでご覧になってみて下さいね♪
by ミカエラ (2007-03-29 17:26) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。