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パリ旅行 2006 *パリ市立近代美術館編* [パリ2006*Paris]

パリ市立近代美術館は、1937年開催された万国博覧会の日本館として建てられた、
“パレ・ド・ドーキョー”の東棟を利用し、エコール・ド・パリの画家の作品を中心に、
キュビスム、フォービスムの画家の作品など、20世紀美術の傑作を収蔵する美術館です。


美術館の最寄の地下鉄イエナ駅の出口を出るとすぐに、
セーヌ川とエッフェル塔を眺めることができました。


ギリシャの神殿風の列柱にレリーフがとても美しい建物です。


このレリーフはロダンの弟子であったブールデル作のもので、
アルカイックスマイルを浮かべる人物像が不思議な魅力を放っていました。
ブールデルの作品は、荒々しく表現されるところが素敵なんですよね、
そしてこのような滑らかなタッチのものを今回初めて見て、
この彫刻家にさらに興味を覚えました。


マティス 『ダンス』 1932年

数十人入れる、かなり大きな空間に展示されています。
訪れた時は、子供たちが座り込んで学習を受けており、
私はあまり他人を入れて写真を撮るのが好きではないものですから撮影しませんでした。
したがってこの写真は資料からのものです(;^^)

この絵はアメリカのコレクターの邸宅を飾っていたそうで、
例えばロシアの富豪シチューキンが邸宅に掛けていた有名な『ダンス』よりも、
こちらのほうが色も形もモダンな印象ですね。
マティスが後年没頭したという切り紙絵を彷彿とさせます。
シチューキンの所有していたものはこちら↓


マティス 『ダンス』  (エルミタージュ美術館蔵)


ボナール 『昼食』 1932年

画家の最愛の妻・マルトをモデルに描いたもの。
画家と出会って32年後に初めて本名が明らかになったとか、
一日の大半を浴室で過ごすとか、来客中でも突然席を立ち入浴を始めるとか、
そんな不思議ちゃんなマルトの様子がよく出ているな~と思いました(;^^)
やわらかい日差しに包まれて、幸せそうにじっとしている猫のようです。


キスリング 『赤いソファーの裸婦』 1937年

胸の膨らみの下部とか、わき腹とか足とかの、このうっすら赤みをさしたところがエロティック!
カバネルの『ヴィーナスの誕生』もビックリですわね(←そーゆー目で観てたのかい)
キスリングはポーランド出身のエコール・ド・パリ(パリ派)と呼ばれた画家のひとりで、
その中でも私が見る限りはとても美男子ですし、明るい性格だったようですから、
モデルたちも描かれる喜びに満ちていたという風が、私には感じられます。


カバネル 『ヴィーナスの誕生』 (オルセー美術館蔵)

※エコール・ド・パリとは、20世紀の初頭に海を渡り、パリで制作を始めた外国人画家の総称で、
モディリアーニ、シャガール、スーティン、そして藤田嗣治もそのひとりでした。


フジタ(藤田嗣治) 『寝室の裸婦キキ』 1922年

モンパルナスの女王と呼ばれ、画家たちの間で非常に人気があったというモデル・キキの肖像。
独特の細い線は、日本画に用いる面相筆というものを使っているそうです。
外国人であるのに日本人のような面差しをしていると思いませんか?
さらにはとても威厳を湛えていてまさに女王の風格(@_@)


(左) ヴァン・ドンゲン 『スフィンクス(菊の女)』 1925年
(右) ヴァン・ドンゲン 『花を盛った水盤』 1917年

左の絵は私が一番楽しみにしていた作品です(^^)
暗闇に浮かぶ首の長~い、少々怪訝そうなマダムと、差し出された花瓶がミステリアスですよね。
菊の花に青磁の花瓶という東洋趣味がいかにも上流という感じ。
銀の絹糸で織られたものでしょうか、光沢のあるアール・デコのドレスも素敵です~♪

オランダの小村出身のヴァン・ドンゲンは、貴婦人の肖像画を描き、
パリの社交界で大成功を収めた画家でした。
その成功の影には一人の美貌と知性を兼ね備えたモデルの女性がいたそうですから、
この絵はもしかすると、その彼女に畏敬の念を込めて捧げたものかもしれません。


ドローネー 『カーディフのチーム』 1912~13年

キュビスムの技法で現代文化を描いたドローネーの作品。
数点ありましたが、どの絵にもエッフェル塔が描かれていました。
街角のカフェに掛けてあったら素敵でしょうね、パリのカフェにいるということを実感できそうです。


(左) ユトリロ 『ブラン・マントーの教会』 1911年
(右) ユトリロ 『ベルリオーズの家』 1914年

今回の旅では、大好きなユトリロの絵を多く見ることが出来て幸せでした(*^^*)
アルコール依存症の治療の一環として、また母親の喜ぶ姿を見たいがために絵筆を握り始め、
入退院を繰り返し、精神状態が不安定であった私生活の中で描いたとは思えないほど、
理路整然としている作風が好きなんです。
寂しさも感じるのですけれど、どこか優しいところもあるんですよね。

父親もわからぬままユトリロを生み、その後は祖母に預け寂しい思いをさせた上、
挙句の果てにはユトリロの3歳年下の親友と結婚し、ユトリロを邪険にしたというなど、
あきれた人物のシュザンヌ・ヴァラドンは、モデルであり素晴らしい才能を持った画家でもありました。


シュザンヌ・ヴァラドン 『モーリス・ユトリロの肖像』 1921年 (モーリス・ユトリロ美術館蔵)

悔しいけれど、力強い筆致の素晴らしい作品だな~と思います(;^^)
こちらから見て右目の下の膨らんだ部分とか、写真と比べるとよく特徴を捉えていることが分かりますし。
また、このユトリロの眼差しに母親への思慕がみなぎっているように見えませんか?
また、自分への、息子の揺ぎ無い愛情を確信しているような、
ヴァラドンの自信に満ち溢れている様子が伝わってくるではありませんか(怒)
そんな目でママンを見ちゃだめ、ユトリロちゃん!
そんなにママンが好きなの? ユトリロちゃん!

ユトリロの絵が売れ始めた際には、その得たお金で年下の夫と贅沢三昧の生活を送ったというヴァラドン…
そのような母親に対してでも、ユトリロは最後まで愛を捨て切れなかったようで、
彼女の葬儀には、絶望のあまり参列できなかったほどであったということです。

しかしそんな母親の元に生を受けたからこそ、今日ユトリロの数々の傑作を
私たちは観ることができるのだと思うと、複雑な心境になるのでありました。

絵画の他、数年前亡くなったナム・ジュン・パイクの映像など、
現代アートも展示してありました。


作者不詳
↑え~、これも多分アート作品だと思われます(;^^)
小部屋の中にタウンページがびっしり。
パリにてまさか自分の居住区の電話帳を見かけるとは思いませんでした。


作者不詳
↑こちらは、お子ちゃまの古着が山と積まれている展示室。
色がカラフルなので、アート作品にしようという発想も分からなくもありません。


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kurohani

パリ市立近代美術館とても素敵な美術館ですね!ミカエラさんの素敵な記事で少し行った様な気分を味わえました♪ユトリロのお母さん、酷い女性だけど絵は素晴らしい(笑)パレ・ド・ドーキョーって結構現代美術を見せていると聞いた事がありますが。最後の子供の写真の作品はクリスチャン・ボルタンスキーでは?
by kurohani (2007-02-24 13:28) 

jin-yuma

凄く勉強になります。

キスリングの赤いソファーの裸婦に釘付けになっています。
ドンケンの2枚の絵にも、シュールな魅力を感じます。
花を盛った水盤の、色使いすきです。
ダークな周りの色に相反して思い切ってカラフルで鮮やかな
花を描く大胆さの内側にある、想いまで想像してしまいます。
by jin-yuma (2007-02-24 17:56) 

ミカエラ

■kurohaniさん、こんにちは♪

>>パリ市立近代美術館とても素敵な美術館ですね!
↑はい^^ どちらかというとパリ国立美術館(ポンピドゥーセンター)の方が有名かも
知れませんが、私はコチラが気に入りました、
空いていてゆっくり鑑賞できたという理由もありますが(;^^)

>>最後の子供の写真の作品はクリスチャン・ボルタンスキーでは?
↑教えて下さって嬉しいです! さすがkurohaniさんですね~(尊敬の眼差し~)
早速、検索してみましたら、子どものポートレートや
古着を撮った写真も見ることができましたので、
仰るとおり、きっとボルタンスキーさんの作品みたいですね^^
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%E2%80%95%E6%AD%BB%E8%80%85%E3%81%AE%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88-%E6%B9%AF%E6%B2%A2-%E8%8B%B1%E5%BD%A6/dp/4891765194

手元に資料が無いので記事に書きませんでしたが、ピカビアの絵も気に入りました。
kurohaniさんの好きなバルチュスにちょっと作風が似ている気がします。
http://www.apt.co.jp/apt/contents/exhi/picabia/picabia.html
by ミカエラ (2007-02-25 15:40) 

ミカエラ

■jin-yumaさん、こんにちは♪
再びお越しくださってありがとうございます^^
そして、アートについてのご意見聞かせていただいて嬉しいです。
こちらこそお勉強になりますよ~。
私も後ほどまた遊びに行きますね☆

>>キスリングの赤いソファーの裸婦に釘付けになっています。
↑そうですね~、お写真が小さくてわかりづらいですが、
シルクの滑らかな肌触りが伝わってくるようなソファーなんですよね、
それによって、モデルの柔肌をも想像させるような効果があるように思いました。

>>ドンケンの2枚の絵にも、シュールな魅力を感じます
↑こちらもお写真が小さいので見づらいですが(;^^)
右の卓の上に頭骸骨が置かれていて、若い時分の美貌の儚さの隠喩のようです。
同じ主題でハンス・バルドゥング・グリーンの絵が有名でしょうか。
http://www.wga.hu/frames-e.html?/html/b/baldung/1/index.html
by ミカエラ (2007-02-25 15:41) 

豆酢

近代美術館には行ってないんです、私(悔)!
辛うじてポンピドゥーを廻ったぐらいで、体力を使い果たして断念しました。こんなにおもしろい展示があるなら、無理してでも行っておけば良かった(/_;)。
私も様々な裸婦画に目が釘付けですわ。とくにカバネルのヴィーナスが官能的。彼女の豊満な肉体に母性も感じました。やはり女性の身体は文字通り絵になる素材ですね。

それからお子チャマの古着のアート(?)も興味あるなあ。子供の服ってすぐに着られなくなってしまうんですけど、それが成長の証なわけで、古着の山は子供の成長の歴史でもあるんですよね。
by 豆酢 (2007-02-28 10:00) 

ミカエラ

■豆酢さん、こんにちは♪

>>彼女の豊満な肉体に母性も感じました。
↑さすがはお母様でいらっしゃる豆酢さん(@。@)
私なんて母性なんて感じたことはありませんでしたよ~、
これからは同じ女性として、そのような視点からも鑑賞してみます、はい(;^^)

>>やはり女性の身体は文字通り絵になる素材ですね。
↑そうですね、大巨匠のルーベンスあたりのものはあまり良さが分からないのですが(;^^)
例えば、オルセー美術館にあるアングルの“泉”とか、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Jean_Auguste_Dominique_Ingres_006.jpg

ウフィッツィのティツィアーノの輝くような裸体画の“ウルビーノのヴィーナス”とかはとても魅力を感じます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Tizian_102.jpg

>>古着の山は子供の成長の歴史でもあるんですよね。
↑これまたお母様ならではのご意見きかせて下さってありがとうございます!
なるほど~奥深いですね、子供のポートレートと共に展示してあるところをみると、
この作者の言わんとするところを、ズバリついているかも知れません。
私なんて、単なる綺麗な色の羅列がアートなんだろなと思った次第です(情けなや~)
by ミカエラ (2007-02-28 15:16) 

Jen

まぁミカエラさん←でのG4の紹介ありがとうございます。
うぅ(;_;)いつの日かジャパンにも来てほしいです。

小学生ぶりにアニメのベルサイユのばらを見ました。
原作漫画は何回も読み直したので、アニメの内容にあれれ?違う・・・
とネットで関連サイトとかめぐっていました。
漫画もどこかにいってしまったな・・・とベルばらの話を
一緒にハマった妹に聞いても、あれ暗くて重くてイヤ・・・と反応薄
そういうわけで初めて憧れた外国1がフランスでした。
血の歴史を知るとパリやベルサイユとか恐怖ですよね。
by Jen (2007-03-06 22:52) 

ミカエラ

■Jenさん、こんにちは(^^)

>>G4の紹介ありがとうございます。
↑いつもJenさんには親切にしていただいてますので、これくらい当然ですよ~♪
紹介文中、ご要望とか、又はヘンテコリンな表現があったら、こっそり教えて下さいね(笑)
イル・ディーヴォも日本公演が大成功したらしいですから、
G4も招致すればきっと人気が出ると思うのですけれど…
少なくとも私はジョン君の歌声とハーモニーと豊富なレパートリーに夢中です。
もっと多くの人に良さをわかっていただけるといいですね(^^)
そういえば、ジュシュ・グローバンは最近アルバムの宣伝をテレビでしてますね、
もしかして、Jenさん、怒ってる?(笑)

>>そういうわけで初めて憧れた外国1がフランスでした。
↑そうでしたか(@。@) ではその次に憧れたのが、『高慢と偏見』の英国でしょうか^^
なるほど、日本人がおフランスに強い憧憬を抱くのは、
ベルばら熱に拠るところが大きいわけですね。 今気がつきました(;^^)
最近、映画『マリー・アントワネット』が公開されてヒットしてるみたいですので、
ますますベルサイユの人気が出そうですね。
http://www.ma-movie.jp/
by ミカエラ (2007-03-07 13:11) 

Jen

マリーアントワネット映画みたい気持ちとCM見てアレレ?な気持ちと・・・。
賛否両論あるみたいですね。

うちは親が元祖ベルばら世代で子供がリバイバル世代です。
脈々とベルばら愛好家が受け継がれていることと思います。
最近本屋で大人の塗り絵ベルばらとかはいからさんが通るとかあって、
塗りたい!とか小学生の頃の憧れがカムバックいたしました。
(古い漫画ばかりですが・・・。
当時はやった漫画というのは心に残らない軽いものばかり・・・)

>日本人がおフランスに強い憧憬を抱く
おフランスざんすという言葉はイヤミざんす@おそ松君だったと思うので、
立役者はイヤミと思っています(^v^;)
でもベルばらの影響って大きいですよね~。
日本人のフランスへの憧れって特別なものがありますよね。
ちょうど話題ですが芸能人のお相手で
国際結婚の中でもフランス人になると別格になりますよね!?

韓国ドラマでも英語圏への留学は多いのですが、
何かとフランスも多いので韓国人にとってもフランスって特別なのかな?
と見ていたことがあります。
by Jen (2007-03-07 20:45) 

ミカエラ

■Jenさん、こんにちは♪

>>マリーアントワネット映画みたい気持ちとCM見てアレレ?な気持ちと・・・。
↑BGMにロックを使っていたりして、ちょっと奇抜な意匠を凝らした作品みたいですね。
私も劇場で観るほど関心はないのですが(;^^)
でも、キャンディカラーの衣装とか、マノロブラニクなんかの素敵な靴など
出てくるみたいですからそれらは女性にとっては見ているだけでも楽しめそうですよね☆

>>おフランスざんすという言葉はイヤミざんす@おそ松君だったと思うので、
立役者はイヤミと思っています(^v^;)
↑おお、そうざんすか、初めて知ったざんす。
“おフランス”大好きですが、ラ・フランスも好物ざんす(←訊いてないから)

>>国際結婚の中でもフランス人になると別格になりますよね!?
↑フムフムなるほど、そういえば中村江里子さんのご結婚の時も話題になりましたね。
リッチだと更にいいわね~(^m^)
私だったら、元サッカー日本代表監督のトルシエ氏の通訳だった
フローラン・ダバディさんあたりと結婚したいですわ~、
何ヶ国語も流暢に話せて、その上サッカーにも詳しいので色々教えていただけそうです。

>>韓国ドラマでも英語圏への留学は多いのですが
↑何か窮地に陥ると、留学と称してアメリカに逃亡するケースが多いですよね(笑)
そういえばフランスに行く場合もありますね^^
以前、『パリの恋人』というドラマを見たことがあります、まずまず面白いですよ。
http://www.vap.co.jp/paris-koi/index.html
今は『プラハの恋人』というのを見てます…パリに比べると地味ですね(;^^)
http://www.tv-tokyo.co.jp/praha/
by ミカエラ (2007-03-09 15:53) 

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