映画 『小さな中国のお針子』 [映画 た行 *Movie]
*監督* ダイ・シージエ
*原作* ダイ・シージエ
*脚本* ダイ・シージエ
*出演* お針子: ジョウ・シュン
マー: リュウ・イエ
ルオ: チュン・コン
2002年 フランス
*あらすじ*
1971年、文化大革命のさなかの中国。
医者であり知識人である親を持つ青年・ルオとマーは、反革分子の子供であるということで、
再教育を受けるため、山深い村落へと送られます。
そこでは、農作業や炭鉱での採掘など、苛酷な作業を課された上、
西洋文学を読むなどの行為が禁止されていました。
そしてふたりは、美しいお針子の少女に出会い愛するようになるとともに、
彼女に禁書(西洋文学)を読み聞かせ、彼女を変えようとするのでした。
原作は『バルザックと小さな中国のお針子』で、著者は監督のダイ・シージエ。
フランス語で執筆、出版され、フランスではベストセラーとなった作品。
****
中国の山深い村落の風景は、まるで山水画のよう…と言いたいところですが、私はペルーのマチュピチュを思い出しました。
文化大革命時には、文学も音楽も西洋のものは排斥されていたということで、日本で言うと戦時中がそれにあたるのでしょうか。
日本はすっかり変わったけれど、中国は撮影の許可を得るにしても、当局が“少女がバルザックに影響を受けた”という件に“中国の文学では駄目なのか”と難色を示すなどしたそうで、体制というのか状況はあまり変わっていないことに驚きました。(常識かしら)
先ごろ、温家宝首相が経済成長方式の転換や環境に配慮するといった政策を打ち出したそうですが、急成長しているのは北京や上海などの大都市部のみで、地方の農村は川の水質汚染が体を蝕み、多くの人々が亡くなった為、最近やっと水道が引かれた村があるなど、経済格差があり、まだまだ発展途上にあるようですね。
そういえば、数年前、中国に旅行した際も、あの有名な西安(中心部を除く)でさえも北京や上海とはあまりにも風景が違うので驚いた記憶があります。
旅行者にとっては牧歌的な風景は異国情緒を味わうにはもってこいですが、不自由な生活をしている人々がまだたくさんいるのでしょう。
この作品は、原作が『バルザックと小さな中国のお針子』とあるように、隔絶した村に住む少女が、ふたりの青年から受けた刺激によって世界観を変えてゆくというのが主なテーマのようです。
でも私は、二人の青年の対照的な愛し方に印象が残りました。
ルオは自分の本能のままに少女を愛し、マーは理性的に愛した、というのでしょうか。
まあ、マーはおくてなのか、先を越されてしまったようでもありましたが(;^^)
ルオが村から離れている間、村人からバカにされても献身的に少女につくすマーの姿がとてもいじらしくて感動的でした。
特に涙を誘ったのは、少女のために“ある依頼”をした医師の前で、マーが涙を流すところ。
あれは、演技中で気が張り詰めていて、感情の赴くままにしたそうです。
どうりで自然な涙だなと思ったはずです。
25年後のマーが、サンローランの香水を少女へ贈ろうとしたところから思うに、少女はいつも彼の心の中にあって、その心の中では少女はマーと一緒に大人の女性になっていった、という事なのかな~と思いました。
そう思うと、マーの静かな深い深い愛情を賞賛せずにはいられません。
それにしても、旅立っていったお針子さん、心許無い感じでしたね~。
志を持って出立したというよりも、私にはとっさに出て行ってしまったって感じにみえて、これからどうするのかしら? と心配でした(T^T)
コメント 0