映画 『ぼくの伯父さん』 [映画 は行 *Movie]
*監督* ジャック・タチ
*脚本* ジャック・タチ
*台詞* ジャック・タチ
*音楽* アラン・ロマン他
*出演* ユロおじさん: ジャック・タチ
ジェラール: アラン・ベクール
アルペル氏:ジャン・ピエール・ゾラ
アルペル氏の妻: アドリエンヌ・セルヴァンチ
1958年 フランス、イタリア
*あらすじ*
プラスチック工場の社長夫妻を父母に持つジェラールは、新築のオートメーション化された
豪華な邸宅に住んではいるものの、あまり楽しくない様子。
彼は、ユロ伯父さんと一緒にいるほうが楽しいのです。
カンヌ特別審査員賞、アカデミー外国語賞受賞作品。
****
主人公のユロおじさんのキャラクターが、ほのぼの~としてほどほどにコミカルで最高です!
殆ど台詞がないので、チャップリンやキートンの映画みたいだなと思いました。
あと、少しだけドジなところがクルーゾー警部を思い起こしました。
また、定職に就かない風来坊なおじさんと、妹の息子という間柄が、寅さんにも似てるなと思ったり…。
けれど、彼らの映画と違うのは、大部分はあからさまに笑いをとろうとしていないところで、ただ、淡々とおじさんや登場人物の生活風景を映しているだけなのです。
おじさんのシーンで可笑しかったのが、彼が初登場する場面で、近所の少女が広場の市でトマトを落としたのに逃げてしまい、罪を着せられたおじさんが、少女を追いかけてたしなめているのかと思いきや、よ~くみると、実は仲良くお話ししていたところ。
なんていい人なのかしら~と感動、ここですっかり彼が気に入ってしまいます(*^^*)
それから、妹(ジェラールの母)が住むモダンな家から帰る時、オートメーションで開く門柱を、「開けて。」というのかなんというのか、訴えるように妹を見やる仕草、…子犬みたいでした(笑)
また、ラスト近く、ユロおじさんが街を出る場面で、急に大人びた少女を前に少し戸惑う姿も印象的で、チャップリンの『街の灯』のラストを思い出しました。
他のキャラクターも台詞が少ない分、”音”にとても惹きつけられます。
例えば、ジェラールのモダンな家の、コンクリートの上を歩く乾いた音、奇妙でユニークな形の噴水のとぽとぽと水が噴出す音、カップ&ソーサーが触れ合う音…。
タチ監督は、とても音の技術にこだわった人だそうで、私のような鈍感な鑑賞者でもその”こだわりの部分”に気づくのですから素晴らしい。
また、あの愉快なテーマソングも忘れ難い…アコーディオンの音がエスプリ~♪(←単純~♪)
ユロ氏を演じるタチ監督は、兵役に就いた時、熱心に人物の動作を観察したそうで、その後パントマイムを始め、やがて映画の世界に入ったとのことです。
何気ない仕草がとにかくチャーミング!
それは自然に現されたものではなく、努力に裏付けられたものなのですね、そう思うとますますユロおじさんを愛したくなってきます(*^^*)
ユロ氏が登場する作品として、『ぼくの伯父さんの休暇』や『プレイタイム』というものがあるそうです。
機会があったら是非観てみたいです(^^)
こんばんは。
つ、ついに、タチですか! さすが、この辺になると素通り出来ません、ワタシ、この人とロベール・ブレッソンはフランス映画100年史における裏番長(!)だと思ってますから、それはそれは昔よく見ましたです。
> 彼らの映画と違うのは、大部分はあからさまに笑いをとろうとしていないところで~
小さな笑いが小波のように押し寄せてくる感じ、ですけど、全体的に見ると、いわゆる「コメディ」というのとは違うと思うのですよ。まず、「劇」では無いんだし・・
ワタシ、タチの映画は、壮大な機械の映画だと思っているのですよ。『プレイタイム』や『トラフィック』とか見ると一発で分かりますけど、車とか、超近代的な建物とか、人工的なオートメーション等々・・そういうのが好きなんです。好きなくせに、そのマシーンの内実はオンボロで、ぺらっぺらなプラスチックな感じ、全然重々しくならない、つーか、ちゃんと機能していない(笑)。ユロ叔父さんが会社勤めしたところで、オフィス空間のシステムなんぞはガタガタにされるだけなのだけど、そういうのを面白がってるのがタチの映画、なのです。
なので、チャップリンの一部作品のように、「機械文明を批判」している訳じゃあないんですよ。むしろ、「機械文明」が大好き(←ココ重要!)。大好き故にその世界の役立たず王として君臨するとゆー感じなのですねぇ・・。
> ユロ氏が登場する作品として、『ぼくの伯父さんの休暇』や『プレイタイム』というものがあるそうです。
イチバン好きなのは『トラフィック』かなぁ・・この映画と『シェルブールの雨傘』が、どうも自分の中ではごちゃごちゃになるんですが(←見れば分かりますが)。車が良いんですよ、確かルノー16が出て来る、やっぱプラスチックな感覚なのです。
『プレイタイム』も良いですよ、見てビックリだと思いますけど、「良いですよ」なんて言葉じゃあ収まりつかない・・『プレイタイム』どうかしてますねって言うのが正解で、よくこんな映画作ったな~と思います。幾らかかったんだと?セットに・・唖然としますから・・アレ映画館で見ると絶大なる効果があるんですけど、最終的には、人物の動きとか、音とか、色彩とか、そういう一つ一つの要素に映画全体が分解・還元されていくのです。それがコメディ風に微分されればタチになるし、悲劇のシネマトグラフに積分されればブレッソンになる、・・な~んて小難しいこと言う必要は全然無いんですけど、・・叔父さん、アホだし(w
by フルヤマ (2006-03-16 02:27)
フルヤマさん、こんにちは(^^)
この映画、実はBSを録画して観ました、文章が上手に書けないので気持ちが伝わってないかと思いますが、とーっても楽しかったのです。
なので、お話しできて嬉しいです~。
そう、コメディでも劇でもないですよね、ただ淡々と生活風景を映し出しているだけ、でも退屈ではない程度にストーリー性がほんのりあって…。
コミカルすぎず哀しすぎずシニカルすぎず、なところがクセになりそうです。
>>チャップリンの一部作品のように、「機械文明を批判」している訳じゃあないんですよ。むしろ、「機械文明」が大好き(←ココ重要!)。
↑ ラジャー! メモメモ。
ジャック・タチ版のモダン・タイムスと仰っていた方がいましたが、少し違うのですね。
そういえば、皮肉っているのかと思いきや、常に優しさがありました。
ミスター・ビーンとシンクロさせている人もいましたが、今思うとその世界に一番近いように思います。
>>イチバン好きなのは『トラフィック』かなぁ・・この映画と『シェルブールの雨傘』が、どうも自分の中ではごちゃごちゃになるんですが(←見れば分かりますが)。車が良いんですよ、確かルノー16が出て来る、やっぱプラスチックな感覚なのです。
↑ ユロおじさんの世界とドヌーヴですか…私には想像できませんが(笑)
映像の色彩も関係があるのでしょうか。
アルペル氏は確かアメ車に乗っていましたね、今思い出したのですが、アルペル一家はまるでアメリカに住んでいるような錯覚をおこしていたのでした。
>>『プレイタイム』どうかしてますねって言うのが正解で、よくこんな映画作ったな~と思います。幾らかかったんだと?セットに・・唖然としますから・
↑ 皆さん、スケールがでかい!と口を揃えて仰ってますね(@。@)
そしてセンスがいいらしい…”見た目重視”の私には嬉しい作品です(笑)
by ミカエラ (2006-03-17 03:03)