映画 『チャーリーとチョコレート工場』 [映画 た行 *Movie]
*監督* ティム・バートン
*原作* ロアルド・ダール
*脚本* ジョン・オーガスト
*音楽* ダニー・エルフマン
*出演* ジョニー・デップ as ウィリー・ウォンカ
フレディ・ハイモア as チャーリー・バケット
デヴィッド・ケリー as チャーリーの祖父
ヘレナ・ボナム=カーター as チャーリーの母
ノア・テイラー as チャーリーの父
2005年 アメリカ、イギリス
*あらすじ*
貧しいながらも温かい家族に囲まれ幸せに暮らす少年チャーリーは、
15年間誰も出入りしたことのない、謎のチョコレート工場への招待状である
“ゴールデン・チケット”を引き当てました。
そのチケットは全部で5枚。
チャーリーは他の4枚のチケットを当てた子供たちとともに、
チョコレート工場の不思議な世界を体験することになります…
イギリスの作家ロアルド・ダールの児童文学『チョコレート工場の秘密』を映画化したもので、
この小説の映画化は、1971年の『夢のチョコレート工場』に続いて2度目。
☆★☆ ネタバレ箇所がございます ★☆★
ティム・バートン監督のブラックユーモアと、ジョニー・デップ演じる奇妙なキャラクター、
そして『バッドマン』や『スパイダーマン』でおなじみの、ダニー・エルフマンによる
少し憂うつなメロディがピリリと効いて、甘くなりすぎないファンタジーでとても楽しかったです。
主人公のチャーリーに、チョコレート工場の招待状である“ゴールデンチケット”が、
なかなか当たらないという設定も、単純でありながらよくできているな~と感心。
なぜなら、それによって、鑑賞者である私たちもじれったくてドキドキワクワク感が増しますし、
当たった時の喜びも大きいわけですものね。
いよいよその喜びを胸に、チョコレート工場へと到着しますと、
ジョニー・デップ演じる不思議ちゃんのウィリー・ウォンカが、案の定…というか予想以上に
かなり風変わりでグロテスクな演出で出迎えてくれます(;^^)
そして、工場の中へ足を踏み入れるととてもカラフルで美しい幻想世界が広がっていました。
そのこの世のものとは思えないような眺めと色彩は、ボッスの描いた“快楽の園”のようでした。
ヒエロニムス・ボッス画 “快楽の園” 中央部分
(キリスト教における七つの大罪のうちの“淫欲”を表したもので、
堕落した世相への戒めを込めて描かれたもの。)
招待された子供のひとりが、常軌を逸した行動をするところなど、
ボッスが作品に込めた戒めや風刺を体現しているようでもありましたね。
メルヘンチックな工場内をどんどん進んでいく道程は、
ディズニーランドのアトラクションに乗っているときの様なワクワク感があったり、
『2001年宇宙の旅』や『サイコ』のパロディがあったり、
また、この工場の従業員である小人のウンパルンパたちが歌ったり踊ったりする場面は、
『オースティンパワーズ』のナンセンスっぽさがあって、
映画好きには嬉しい笑いがちりばめられていました。
見学が進むにつれ、自分勝手でワガママな子供たちが、
次々と懲らしめられていく姿もスカッとしましたね(笑)
でもそれは、決してウィリー・ウォンカが手を下したわけではなく、
子供たち自身の傲慢な態度が招いたものですから自業自得なわけです。
それに、懲らしめられ方もそれほど手ひどいものではなくてユーモラスだし救いがあるので、
作り手の優しさが感じられて、そんなところがとても気に入りました。
単純な思考回路の私には、ウィリー・ウォンカと『シザーハンズ』の主人公エドワードが、
無邪気で可愛らしいところ、そして家族の愛やら温もりを求めているという点で
重なって見えてしまうところがあり、最後はどうなってしまうのだろうと心配しましたけれど、
皆が心を通い合わせることのできた素敵な終わり方でしたのでほっとしました(^^)
家族の愛をテーマとした、心温まる素敵な映画でしたね~。
これからの寒い季節に、暖かいお部屋で家族団らんで観るのもよし、
ロマンチックな真冬の夜☆に、好きな人とふたりきりで観るのもいいですね。
熱~いホットチョコレートなど飲みながら♪
オフィシャルサイト→http://wwws.warnerbros.co.jp/movies/chocolatefactory/
映画 『小さな中国のお針子』 [映画 た行 *Movie]
*監督* ダイ・シージエ
*原作* ダイ・シージエ
*脚本* ダイ・シージエ
*出演* お針子: ジョウ・シュン
マー: リュウ・イエ
ルオ: チュン・コン
2002年 フランス
*あらすじ*
1971年、文化大革命のさなかの中国。
医者であり知識人である親を持つ青年・ルオとマーは、反革分子の子供であるということで、
再教育を受けるため、山深い村落へと送られます。
そこでは、農作業や炭鉱での採掘など、苛酷な作業を課された上、
西洋文学を読むなどの行為が禁止されていました。
そしてふたりは、美しいお針子の少女に出会い愛するようになるとともに、
彼女に禁書(西洋文学)を読み聞かせ、彼女を変えようとするのでした。
原作は『バルザックと小さな中国のお針子』で、著者は監督のダイ・シージエ。
フランス語で執筆、出版され、フランスではベストセラーとなった作品。
****
中国の山深い村落の風景は、まるで山水画のよう…と言いたいところですが、私はペルーのマチュピチュを思い出しました。
文化大革命時には、文学も音楽も西洋のものは排斥されていたということで、日本で言うと戦時中がそれにあたるのでしょうか。
日本はすっかり変わったけれど、中国は撮影の許可を得るにしても、当局が“少女がバルザックに影響を受けた”という件に“中国の文学では駄目なのか”と難色を示すなどしたそうで、体制というのか状況はあまり変わっていないことに驚きました。(常識かしら)
先ごろ、温家宝首相が経済成長方式の転換や環境に配慮するといった政策を打ち出したそうですが、急成長しているのは北京や上海などの大都市部のみで、地方の農村は川の水質汚染が体を蝕み、多くの人々が亡くなった為、最近やっと水道が引かれた村があるなど、経済格差があり、まだまだ発展途上にあるようですね。
そういえば、数年前、中国に旅行した際も、あの有名な西安(中心部を除く)でさえも北京や上海とはあまりにも風景が違うので驚いた記憶があります。
旅行者にとっては牧歌的な風景は異国情緒を味わうにはもってこいですが、不自由な生活をしている人々がまだたくさんいるのでしょう。
この作品は、原作が『バルザックと小さな中国のお針子』とあるように、隔絶した村に住む少女が、ふたりの青年から受けた刺激によって世界観を変えてゆくというのが主なテーマのようです。
でも私は、二人の青年の対照的な愛し方に印象が残りました。
ルオは自分の本能のままに少女を愛し、マーは理性的に愛した、というのでしょうか。
まあ、マーはおくてなのか、先を越されてしまったようでもありましたが(;^^)
ルオが村から離れている間、村人からバカにされても献身的に少女につくすマーの姿がとてもいじらしくて感動的でした。
特に涙を誘ったのは、少女のために“ある依頼”をした医師の前で、マーが涙を流すところ。
あれは、演技中で気が張り詰めていて、感情の赴くままにしたそうです。
どうりで自然な涙だなと思ったはずです。
25年後のマーが、サンローランの香水を少女へ贈ろうとしたところから思うに、少女はいつも彼の心の中にあって、その心の中では少女はマーと一緒に大人の女性になっていった、という事なのかな~と思いました。
そう思うと、マーの静かな深い深い愛情を賞賛せずにはいられません。
それにしても、旅立っていったお針子さん、心許無い感じでしたね~。
志を持って出立したというよりも、私にはとっさに出て行ってしまったって感じにみえて、これからどうするのかしら? と心配でした(T^T)
映画 『ダウン・イン・ザ・バレー』 ~イノセントな恋のゆくえ~ [映画 た行 *Movie]
*監督* デヴィッド・ジェイコブソン
*脚本* デヴィッド・ジェイコブソン
*プロデューサー* ホリー・ウィーアズマ
エドワード・ノートン 他
*音楽* ピーター・サレット
*出演* ハーレン: エドワード・ノートン
トーブ: エヴァン・レイチェル・ウッド
ウェイド: デヴィッド・モース
ロニー: ローリー・カルキン
2005年 アメリカ
*あらすじ*
カリフォルニア州サンフェルナンド・バレーに住む17歳のトーブは父親と弟との三人暮らしで、
窮屈な毎日にうんざりしていました。
ある日、トーブはビーチへ出掛ける途中、ガソリンスタンドで自分はカウボーイだという男性、
ハーレンに出会います。
その後2人は愛し合うようになり、トーブの弟のロニーもハーレンと親しくなってゆきました。
得体の知れないハーレンを警戒する姉弟の父親・ウェイドは、交際を禁じ、
反抗するトーブに手をあげてしまうこともありました。
そんな様子を見ていたハーレンは、やがて姉弟をウェイドから助け出そうとします。
****
エドワード・ノートン主演、プロデュース、更にヒロイン役のエヴァン・レイチェル・ウッドはノートンのお気に入りということもあり、以前から気になっていた作品でした。
舞台はロサンゼルス近郊のサンフェルナンド・バレー。
挿入歌の歌詞にもあるとおり、頭上をリボンのように交差するハイウェイと、近くには空港があるらしく、そのハイウェイすれすれをジェット機が飛んでゆきます。
あまり気合の入っていない、無機質な、寂寥感漂う町でした。
メインタイトル曲の『Fly Sparrow Fly』という、けだるいカントリー調の曲が、いっそうメランコリックな気分にさせるのです。
曲を提供したアーティストはノートンの幼なじみだそうですから、選曲を依頼したのもノートンなのでしょう、そんなところにも彼のセンスの良さを感じますね。
トーブと仲間たちはビーチへ行く途中に寄ったガソリンスタンドで、カウボーイハットに白い綿のシャツとジーンズという出立ちのハーレンを見て笑い転げます。
しかし、私にはそれほど奇妙な格好には見えませんでした、ジーンズにフリンジの付いた皮のズボン(←なんて言うんでしょうかね)を重ねて履いていたら、それは可笑しいと思うでしょうが…。
他人のファッションに敏感な、若い子たちだったので余計反応したのでしょうね。
トーブとハーレンは性急に愛し合うようになり、更にトーブの幼い弟のロニーも彼と親しくなっていきます。
笑いものにされても、自分がいいと感じた相手には、周りの目を気にせず真っ直ぐに躊躇することなく愛するトーブに、エヴァン・レイチェル・ウッドの毅然とした賢そうな佇まいがピッタリで、素晴らしかったと思います。
これを見た姉弟の父親は、とても心配し始めて、距離を置くよう諭すのですが、不器用なので気持ちが上手く伝わらなくて可愛そうでした(T_T)
やがて厳しく交際を禁じられてからのハーレンは、奇妙な行動を起こすようになります。
何かに倒錯しているらしいのですが、それが何なのか私にはよく分からず、原因も不明だし、また、少しだけ明らかになった彼の過去についてもあまり衝撃的ではありませんでした。
結局彼は哀しい嘘と謎を残したまま…副題だと思われる“君は谷間に吹く風”のように、包み込むような優しさと、狂気、ナイーブさの余韻を残して去って行きました。
公式HP→http://www.downinthevalley.jp/
映画 『タイガーランド』 [映画 た行 *Movie]
*監督* ジョエル・シューマカー
*脚本* ロス・クラヴァン/マイケル・マクグルーサー
*出演* ボズ: コリン・ファレル (ボストン批評家協会賞主演男優賞)
パクストン: マシュー・デイビス 他
2000年 アメリカ
*カンタンあらすじ*
1971年、敗戦が囁かれ始めたベトナム戦争のさなかのアメリカ。
ボズ(コリン・ファレル)は戦場へ送られる前の、厳しい訓練を受ける若者たちのひとりでした。
彼は戦争及び、殺し合いをすることに反対であり、この戦争自体に懐疑的だった為、
上官に反抗的な態度をとったり、脱走しようと計画します。
一方、訓練中に出会い親友となったパクストンは、志願して兵士になった上、
いつか戦場の記録を本にして世に出したいという夢を持っていました。
そんな彼等はやがて、地獄のような最終訓練地“タイガーランド”へと送られます。
そしてふたりの運命は思いもよらぬ方向へと進んでゆくのでした。
http://www.foxjapan.com/movies/tigerland/
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ああコリリン、あなたはどうしてそんなに魅力的なの~(;。;)
反抗的で、賢くて、強くて、弱い者には優しくて、ちょっとお茶目で、それでもって極めつけはとてもセクシー。
コリン・ファレルの魅力全開、演技もとても素晴らしい!…もう私の心を捉えて放しません。
ボズ(コリン)は、不遇の身の上の兵士仲間を、軍規の抜け道を探して除隊させてあげたり、弱い者や精神不安定な者に優しく気を使ってあげたりしていましたが、正義感とかいうのではなくて、「人として自然のことをしてるだけ」、と言っているかのようでした。
いつも反抗的で粗暴な問題児が、ふっと見せる優しさって心にしみますよね。
また兵士仲間から不幸な身の上話を聞かされた時も、「なんでそんなことオレに話すんだよぉ!」と半べそかいたり、怪我することや死ぬことを怖がったりするところもとても人間味があって、それをいとおしいと思わせるほど巧みにに演じていてたコリンは最高です。
DVDではそんな素晴らしいコリンの、貴重なオーディションの様子も見ることができて感無量でした。
最後にボズは運命に流されて、思いもよらぬ方向へと進んでしまうのだけれど、覚悟は出来ているという姿が潔くて爽やかでした。
この物語は脚本家自身の体験に基づいて作られているそうです。
又、9.11テロの影響で、ラジオスポットが中止されてしまったとか。
そんな時ほどこの反戦映画を流すべきではないのかしら…無理ですね(;^^)
もうすぐ日本でも終戦の日ですが、国は違うけれど、戦争によって青春の自由を奪われた、こんな若者たちがいたということを思い知らされる悲しい映画した。
コリン・ファレルはこの時まだそれほどその名を知られてはおらず、その後、スピルバーグ監督の『マイノリティ・リポート』などに出演し、注目を浴びるようになったそうです。
そして2002年には再びジョエル・シューマカー監督の、『フォーン・ブース』に出演するのですが、こちらもとても面白い作品でした。↓
http://www.foxjapan.com/movies/phonebooth/index2.html
今度のコリリンは、嘘をつくことなんて気にしない大胆なパブリシスト(宣伝屋)。
ある日何者かの脅迫によって、電話ボックスから離れられなくなってしまいます…。
初めは傲慢にふるまっていたけれど、犯人の脅迫によって公衆の面前で恥ずかしいことを言わされたり、自分を心配してくれている妻の姿をみているうちに、自分の今までの生活を省みるようになってゆきます。
ドルチェ&ガッバーナのスタイリッシュなスーツで決めた主人公のスチュ(コリン)が、犯人との駆け引きに疲れ、追い詰められて段々とボロボロになってゆく変貌ぶりが見ものです♪
映画 『蝶の舌』 [映画 た行 *Movie]
1999年 スペイン
*監督* ホセ・ルイス・クエルダ
*音楽* アレハンドロ・アメナバル
*出演* 少年モンチョ: マヌエル・ロサノ
グレゴリオ先生: フェルナンド・フェルナン・ゴメス
*カンタンあらすじ* 1936年スペインの小さな村の少年モンチョは、喘息持ちのため、皆と一緒に小学生になれませんでした。
しかも兄のアンドレスに先生からの体罰の話を聞かされ、恐怖で眠れぬ夜を過します。
学校での初日には、緊張からか失禁してしまい、教室から飛び出していってしまいます。
しかし優しいグレゴリオ先生のおかげで、友達も出来、やがてクラスに馴染んでいきました。
春には先生と森へ行き、自然について学びます。
例えば蝶にはぜんまいの様な舌があること、オーストラリアにはメスに蘭の花を捧げるティロノリンコという鳥がいること…。
しかし軍事クーデターによりスペイン内戦が始まると共に、先生と生徒たちの穏やかな日々は終わりを告げました。
スペイン・アカデミー(ゴヤ)賞 13部門ノミネート、脚色賞受賞作品。
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モンチョ役の少年は、一見それほど魅力的とは思えませんでしたが、先生の話を熱心に聞き、あるいは先生の姿を見て、何かを感じようとしている表情にどんどん引き込まれていきました。
これは子供の本能なのでしょうね。大人になると、“意識して”学んだり感じようとしたりするけれど、モンチョを見ていると好奇心が自然とそうさせていると思いました。
初めてクラスで紹介された時は、緊張のあまり失禁してしまうほどだったのに、友達をかばおうとした時の表情、そして最後にグレゴリオ先生に別れを告げる表情は実に大人びて、あきらかに成長している様子が伺えて、素晴らしかったです。
さすが2500人の中から選ばれた子役です(^^)
モンチョの兄のアンドレスの恋の場面も印象に残りました。
いつもサックス演奏が下手でしたが、恋する女性の前で、初めて上手に演奏してみせて、皆を驚かすところ。
そういえば、アンドレスの音楽の先生が、演奏する時はいとしい人を想いながら…と指導していましたね。
私も以前、楽器を演奏していた時があったのですが、恋する人を想いながら演奏すれば、もっと上手に演奏できたかしら。
でもまだその頃は子供だったので、きっとそんな余裕はなかったでしょう(;^^)
最後に共和派(反ファシズム)のグレゴリオ先生は、ファシストによって自身が語っていた“人間が作る地獄”へと連行されてしまい、友達だったモンチョの父や、モンチョにまで「裏切り者!」と罵声を浴びせられて悲しそうな表情でした。
しかしモンチョの父たちが罵声を浴びせたのは、自分と家族の身を守るため。
そして本当は皆、先生を愛していることを分かってくれたことでしょう。
モンチョの「ティロノリンコ! 蝶の舌!」と言う叫び声によって。