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映画 『ぼくの小さな恋人たち』 ~マルタン・ローブ礼賛~ [映画 は行 *Movie]

ぼくの小さな恋人たち

ぼくの小さな恋人たち

  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 2003/03/01
  • メディア: DVD


*監督* ジャン・ユスターシュ
*脚本* ジャン・ユスターシュ
*製作* ピエール・コトレル
*撮影* ネストール・アルメンドロス
*出演* ダニエル: マルタン・ローブ
     母親:    イングリット・カーフェン
1974年 フランス

*あらすじ*
南フランスの田舎町に祖母と二人暮らしだった13歳の少年・ダニエルは、
ある日現れた母親とその恋人と共に、都会で暮らすことになりました。
高校に進学することを望んだダニエルでしたが、母の反対にあい、
修理工として働くこととなります…。
ジャン・リュック・ゴダールに見出され、最後のヌーヴェルバーグと評されたという、
ジャン・ユスターシュ監督の、自伝的ともいわれる少年の性へのめざめを描いた作品。

                      ****

ヌーヴェルバーグな映画の良さがよく分からない私ですが、この作品は私にとって忘れ難い印象を残してくれました。
まず、第一にダニエル少年演じるマルタン・ローブの繊細な美しさ!
簡素な上着やパンタロンをさらりとお洒落に着こなしているのは、小柄で華奢だけれど、手足が長いこともあるでしょうか。
また、時々の仕草、例えば食事をする仕草、本をめくる仕草、そしてベッドで寝入る姿などがとても上品で、決して大人びているのではなくても、なぜか色気を感じてしまいました(;^^)
最近仕入れた知識である、古代ギリシアのパイデラステイアー=少年愛が少~しだけ理解できた気がします。

祖母との穏やかな生活から一転、ダニエルを働かせる為に呼び寄せた母親との生活に、絶望感を露わにすることなく受け止めている様が、逆に哀感を誘いました(涙)
やがて、女性との接触に興味を持ち始めてゆくのですが、それは当然友達の影響もあったでしょうが、母親とその内縁の夫との関係が、大きく影響を与えたと思うのです。

暗い映画館内で、草原で…少年は少しづつ、見方によっては性急に性にめざめて成長していきます。
それは、恋でもなければ愛でもない、単なる遊びでもなくて…
子供っぽく見えるマルタン・ローブだからこそでしょうか、やけに生々しいのです。

最後に、祖母の元に一時戻った彼の、昔のように少年たちと遊びに出掛ける姿を見ていて、以前と変わらぬ子供らしさを垣間見たと思った瞬間、明らかに成長した少年の姿に胸を突かれるのです!

アルジェリア戦争への徴兵を拒むために毒を飲んだり、ピストル自殺で夭折するなどのユスターシュ監督の狂気の人生とあいまって、強烈な印象が残りました。

この手の映画で似た作品といえば、私の少ない鑑賞作品の中では、『あこがれ美しく燃え』やツルゲーネフ作で有名な『初恋』を思い出す程度ですが、どちらも好きな作品です。
しかし前者は大人の女性が少年を受け入れてしまうので官能的すぎるし、後者はナイーブで綺麗すぎるかな…と今回の映画の後では少し色褪せて思えます(;^^)

あこがれ美しく燃え

あこがれ美しく燃え

  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 2003/02/22
  • メディア: DVD

はつ恋

はつ恋

  • 作者: 神西 清, ツルゲーネフ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000
  • メディア: 文庫


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コメント 5

Haruhi

こんにちは~^^
入れました
そして、ミカエラさんが映画好きであることを知りました
バックナンバーで購入した雑誌の中に『モーターサイクル・ダイアリーズ』(だったかな・・?)も、作品紹介と言うより主演されてた俳優さんの紹介だけで終わっていたので、ミカエラさんのサイトで内容がようやくわかりました(ブログの方ではなく、本家サイトの方です)
わたしは映画に詳しくないのですが、知りたい映画などがあったら、質問させていただきます^^
by Haruhi (2006-01-18 12:27) 

ミカエラ

Haruhiさん、こんにちは(^^)

こちらにまでコメントいだだきまして、ありがとうございます~。
嬉しいです♪

“お絵かき”のカテゴリーでモデルについて少し語っていますが、多分、誰も興味が無いだろうなあと思ってしまうので、いつもテキトーな記事ですが、今度はHaruhiさんのブログみたいに少し力を入れて書きますわ!
でもHaruhiさんのように愉快でテンポのある文章は書けないのよね(しくしく)

『モーターサイクル・ダイアリーズ』の主演は、ガエル・ガルシア・ベルナル君というメキシコ出身の演技がとても上手な俳優さんで、私の周りのもファンの方が大勢いるんですよ~、機会があったら是非映画をご覧になってみて下さいね。

>>知りたい映画などがあったら、質問させていただきます^^
↑ 私もそれほど詳しくないですが、いつでもどうぞ♪
私にも分からないものは、別のブロガーさんに訊いてお答えします(←え?)
by ミカエラ (2006-01-18 15:37) 

NO NAME

こんばんは~・・、またのこのこ現れちゃいました。
この作品(『ぼくの小さな恋人たち』)、どーしても素通りできませんの。

オトコの子が性に目覚めてとか、色っぽいお姉さまに絆されてとか、その種の作品ならヤマ程あって・・ロバート・マリガンの『おもいでの夏』とか、ルイ・マルの『好奇心』とか、そういう「名作」に限らず、「初体験」何とかとか、「青い~」うんたらかんたらみたいなタイトル付いたのには決まってそのパターンが多い・・(ついでに、やたら70年代に作られてるw)。
しかーし、この作品は、そのどれにも当てはまらない! 見ていてとても身につまされると言うか、とっても恥ずかしーー#ものがあるんです・・・そこが良いんだけど(w

> 恋でもなければ愛でもない、単なる遊びでもなくて…
> 子供っぽく見えるマルタン・ローブだからこそでしょうか、やけに生々しい~

↑まさに! かなりの美形なんだけどフツーのコドモ、って感じなのがイイ。 間違っても「子役」じゃない。 だから、生々しい(笑)。

あと、監督が入れこんじゃってるから・・あんまりカメラとの距離感が無いんですよね。一見、クールに淡々とやってるように見えるけど、全然そんなことない。外側があっさりしてる分、内側のざらつき方が凄い。(例えば『ある子ども』のダルデンヌ兄弟のオトナ視線とかに較べてみれば明らか!)。 人として、と言うより、オトナとしてどうなの?って位、のめりこんじゃってる。オトナの目線がどっかに逝っちゃってる・・だから、間違っても「名作」ではないんだけど、こうしてブログなんぞで密かに語り継がれるにはもってこいな作品。 日の当たる世界に連れ出したら、たちまち枯れてしまう何か。

> 最後に、祖母の元に一時戻った彼の、昔のように少年たちと遊びに出掛ける姿を見ていて、
> 以前と変わらぬ子供らしさを垣間見たと思った瞬間、明らかに成長した少年の姿に胸を突かれるのです!

何と言いますか・・本当ならあと5~10年は"熟成"を待たなければならないペサック村産の赤ワインを無理矢理ナルボンヌに引っ張り出して来て、年かさの連中のデキャンタージュで強引に開かされて、うん、まぁショタでも悪くないか、みたいな痛々しさ。。。(が、ありました)

コレとはちょっと違うけど、二人の妻を抱え込んだ子持ちのオッサンが、実の娘を勝手に連れ出してバカンス最中で誰もいないスペインの街中を車で渡り歩くドワイヨンの『家族生活』という傑作がありまして・・・あそこに描かれているのは、オトナ(オトコ)の少女に対する愛。勿論、娘に対する愛でもあるし、子どもに対する愛でもあるのだけども、明らかに10歳の娘とでなければ成立しそうに無い相愛関係を試みようとして、無残にも失敗する痛ましい映画なのです。 確かに子持ちの40男が実の娘と恋愛するのは難しいと思うけど(w ラストにVIDEO画面上に映し出された少女の寝顔のアップの何とまぁ官能的なことか! じんわりと男の痛みまでもが伝わってきて、アレ見たらキューブリックの『ロリータ』なんかどっか逝っちゃいますよ。 興味があれば、是非ご覧になってはどうでしょう?(^^)
by NO NAME (2006-01-18 22:37) 

フルヤマ

ス、すみません・・(NO NAMEって・・^_^; ↑の記事、ワタクシ(フルヤマ)ですので。。。
by フルヤマ (2006-01-18 22:39) 

ミカエラ

フルヤマさん、こんにちは♪

いつだったかBBSのほうでも、そして某所の掲示板でも反応していただいて、更にまた色々と語っていただいてありがとうございます(^ⅴ^)

初めてご紹介いただいてあらすじを読んだ時は、これって痴漢行為では? な~んて思ったりしましたが…やっぱり痴漢(笑) いえ、相手が受け入れているのだから犯罪ではないですよね。
それに例えば映画館で場面でも、何故かそれがとても自然な行為にも見えたりして…。
とにかくマルタン君なら許せます(笑)

>>とっても恥ずかしーー#ものがあるんです・・・
↑ 同じ男性だから特にそう思われるのでしょうね。
そういえば、働いてる店の前で逢引きしている男女をジ~っと眺めているところとか、そのお姉さんと視線を交わす場面なども、なんか恥ずかしーーけどよかったですねぇ。

けだるそうで、子供を愛しているのかどうなのか良く分からない母親も、今思うと存在感があったなと思います。

>>明らかに成長した少年の姿に胸を突かれるのです!
↑ ネタバレしてはいけないと思い、こう書いたのですが、“成長”というのは的確ではないかもしれませんね。
味わいを知ってしまったとかでしょうか、上手く言えませんが、まさに熟成途中、さすがワインに例えるなんて上手いですね~分かり易いし素晴らしいです(*^^*)

>>確かに子持ちの40男が実の娘と恋愛するのは難しいと思うけど
↑ えええ!? これまたディープな世界の映画のご紹介をありがとうございます(笑)
私に分かるかしら~(;^^) でも食わず嫌いはいけないので、レンタルで探してみますね。

今日はフリップ・ガレル監督の『秘密の子供』というビデオを借りてきました。
またまたニコさんの追懐ですか~?(;^^) と思いましたが、レンタル店で何気なく棚を見てたら目に飛び込んできたので、これも何かの縁かと思い借りることにしたのです。
by ミカエラ (2006-01-19 17:44) 

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