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映画 『北京ヴァイオリン』 [映画 は行 *Movie]

北京ヴァイオリン 特別プレミアム版

北京ヴァイオリン 特別プレミアム版

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • 発売日: 2004/04/02
  • メディア: DVD

*監督* チェン・カイコー
*脚本* チェン・カイコー、 シュエ・シャオルー
*撮影* キム・ヒョング
*音楽* チャオ・リン
*出演* タン・ユン as チュン
      リウ・ペイチー as 父リウ
      ワン・チーウェン as チアン先生
      チェン・ホン as リリ
      チェン・カイコー as ユイ教授
2002年 中国

*あらすじ*
中国の田舎町。13歳の少年チュンは、母の形見であるヴァイオリンを弾くことに長け、町で評判の少年でした。
息子のヴァイオリニストとしての成功を願う父は、コンクールに出場させるべく、
息子を連れて北京へと上京。
コンクールで優勝はできなかったものの、良い先生につかせてレッスンさせようと、
父親は慣れない大都会で東奔西走します。

2002年、サン・セバスチャン国際映画祭で最優秀監督賞と最優秀主演男優賞(リウ・ペイチー)を受賞。
ユイ教授役は監督自身、また、リリ役は、監督の妻チェン・ホン。

                          ****

これは天才ヴァイオリニストの成長や成功するまでを描いたものではなく、“愛”と“絆”の物語です。

蛇足かもしれませんが、お恥ずかしながら、最近、私はようやく“愛”と“恋”の違いが分かってきました。
恋とはセクシュアルな欲求を伴うとともに、相手に見返りをも求めるものであり、愛とは決して見返りを求めることはなく、ただひたすらに相手に捧げるということなのですね、だから“無償の愛”とよく言われますが、“愛”というひと言の中に“無償”という意味がもうすでに含まれているわけですよね。
言葉ではなんとなく分かっていても、両方をひと括りにしていたところがあったかもしれません。

この映画は“愛”とはこういうものだ!と、ひしひしと感じることができる、私に明確に示してくれた素晴らしい映画でした。

映画の中の父親は、とにかく息子を一流のヴァイオリニストにしたいと、お金を稼いだり、いい先生を探したりと、慣れない大都会で奔走します。
少年の才能が認められ始め、また、将来成功を掴んだ暁には、そのお相伴に預かろうなんていう気持ちは一切無いんですね、むしろ身を引こうとする…全く邪心のないその純粋な“愛”の姿に感激せずにはいられないのです。

しかし、ただの人情ものというのではなくて、一流奏者として成功するには、単に腕前のいい先生についてレッスンすればいいというものではなく、後ろ盾がものをいう世界(もしくは時代?)なのだという、やりきれない部分も見せられて、きれい事では済まされない厳しい世界を思い知らされもしました。
更には、中国の地方と北京という大都会の生活水準の格差が、そんな現実を感ずるに拍車をかけていると言えるでしょうか。

いい映画だと思うのですけれどね、辛口批評が多いです(;^^)
多分、皆さん、映画を観る目が肥えてらっしゃるので物足りないのかも知れません。
確かに描き方が大雑把と思いましたが、人口6億人の中国ですから仕方ないですよね~(違)
それにしては多くの方々がレビューを寄せていらっしゃるということは、よくも悪くも鑑賞者の心に一石を投じた作品だったということではないでしょうか。

そして、ラストでは、自分にとっての本当の幸せとは何なのか、または父親への溢れんばかりの想いを、少年がヴァイオリンで表現するのですよね、ここが本当に素敵なんですよ(^^)

ヴァイオリン演奏は吹き替えだそうですが、少年役のタン・ユンは実際にヴァイオリニストを目指し勉強中の学生だとか。
父親に対する愛情というのか感情を露わにする時の様が、普段は朴訥としているだけに、ギャップがあって可愛いです。

物語の最後に、少年はある選択をするのですが、後味が悪いとお思いになる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、あのシーンに“諦め”を感じるのではなく、私は、きっと父親の努力は報われ、願いは必ず叶うと思わずにはいられない!

また、チェン・カイコー監督自身、まだ14歳であった文化大革命時に、“父親を裏切るか。公衆で恥をかくか。”という辛い選択をせざるを得なかったという体験をしたそうですから、監督自身が父に捧げるバラードというべき作品でもあるのでしょうね。

とにかく、私にとっては涙涙の感動作でした。 
私と同じくファザコンの皆さま、必見です(笑)
「お父しゃ~~ん(ToT)」

それから、この映画はなんといっても全編で流れるクラシックを中心とした音楽が素晴らしく、早速サントラを購入して聴き耽っています♪
皆さん誰もが一度は耳にしたことがあるのではないかと思われる、リストの『コンソレーション3番』、ヴェルディのオペラ『ナブッコ』からの合唱、また、チャオ・リンによる中国の伝統音楽をアレンジして作曲されたノスタルジー漂う作品などバラエティに富んでいて素晴らしい!
中でも、少年チュンが父親へのほとばしる愛をぶつけるようにヴァイオリンを弾く場面で使われた、チャイコフスキーの『ヴァイオリン協奏曲ニ長調(第3楽章)』が最高です(*^^*)

北京ヴァイオリン

北京ヴァイオリン

  • アーティスト: サントラ, チャオリン, 中国国立交響楽団, リー・チュアンユン, フアン・ヤメン, プラハ国立歌劇場合唱団, ボフミル・グレゴル
  • 出版社/メーカー: Sony Music Direct
  • 発売日: 2003/04/23
  • メディア: CD


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コメント 4

ken

確かにこの作品には辛口の批評が多いですね。
僕は文句なく大好きな作品なのですが、世の人にとってどこに不満があるのか
まったく分かりませんでした(実はいまも分かってないのですが)。
僕はこのジャケットのアートワークも大好きです。
by ken (2006-10-27 16:30) 

ミカエラ

■kenさん、はじめまして、こんにちは(^^)
コメントとナイス、そしてTBもありがとうございます~。
批判意見に対抗するように(笑)、「素直に感動した。」というご意見も多かったですね、私はその一言に尽きると思います。
ありきたりだとか、雑だとか、プロットがなってないとかそんなことはどうでもいいし、
綺麗な風景画を観て、理屈抜きに美しいと感じるのと同じではないかと思うのです。
というか、素直に見ていれば、又は少し思いを廻らせば何を言いたいのか伝えたいのかすぐに分かりますよね。
奇想天外な物語りやら、一部の隙もなく理路整然としていればいいというものでもないと思います。
by ミカエラ (2006-10-27 18:04) 

B

あら。 評判よくないんですか、この映画!?
ぜひそのうち観たいなと思っていました。
この手のお話は嫌いじゃないです。

映画に詳しくなってくるとどうしても、あれはどうだとか
ここがあれだとか、って風になってくるみたいですね。
もっと単純に、娯楽として楽しむのもいいと思います。

まだ始めたばかりのブログで、映画好きな人への質問(100問)
というのに答えてみました。 その中の、映画にまつわる名前の
喫茶店を開くなら? という質問に、映画を理解してないくせに
生意気にも、ドルチェ・ヴィータと答えました。 そんなご縁?です。
ちなみに映画についての記事は1割も書いていません! ご了承ください。

キース・へリングのデザインしたものが、パリに飾られてあるなんて
いうのも、はじめて知りました☆ しかも聖域になんて!

申し遅れましたが、はじめまして!
長々と失礼いたしました。 またまいります♪
by B (2006-11-10 16:48) 

ミカエラ

■Bさん、はじめまして、こんにちは(^^)
ご訪問ありがとうございます。

>>もっと単純に、娯楽として楽しむのもいいと思います。
↑そうですよね~、これもそんな作品だと思います。
言われてみれば確かに突っ込みを入れたくなる場面も、
あるにはありましたが、そんなことはどうでもよくなるほど、親子の愛が素敵でした。

>>喫茶店を開くなら? という質問に、映画を理解してないくせに
生意気にも、ドルチェ・ヴィータと答えました。 そんなご縁?です。
↑まあ♪ ステキなご縁ではありませんか!お洒落なケーキが置いてありそうな喫茶店ですね~。
実は私もLa Dolce Vitaは一度観ただけでして、しかもあまり良さが分かりませんでした(;^^)
でも、主役のマルチェロ・マストロヤンニのとてもチャーミングな台詞があるので、
そこは気に入っています。

>>キース・へリングのデザインしたものが、パリに飾られてあるなんて
いうのも、はじめて知りました☆ しかも聖域になんて!
↑そちらの記事も見てくださってありがとうございます(^^)
そうなんですよ、私も初めて知りました。
誰も気が付かない様子で、素通りして行かれる人が多かったので、
「ちょっと、そこのあなた! これ、ヘリングの祭壇ですよ!」
と、呼び込みしたい気分でした(笑)
by ミカエラ (2006-11-10 19:19) 

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