映画 『悪魔のような女』 [映画 あ行 *Movie]
*監督* アンリ・ジョルジュ・クルーゾー
*原作* ピエール・ボワロー、 トーマス・ナルスジャック
*脚色* アンリ・ジョルジュ・クルーゾー、 ジェローム・ジェロミニ
*出演* ニコル: シモーヌ・シニョレ
クリスティナ: ヴェラ・クルーゾー
ミシェル: ポール・ムーリッス
1955年 フランス
*あらすじ*
パリ近郊の寄宿舎学校。
その学校長であり夫・ミシェルの横暴さに耐えかねた妻・クリスティナが、
ミシェルの愛人・ニコルと共謀して彼を殺害します。
しかしその後、次々と思いもよらない奇怪な出来事が起こり始めたのでした…。
クリスティナ役のヴェラ・クルーゾーは、クルーゾー監督の夫人。
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映画の最後に、“この悪魔に憎悪を抱いても、決して口外しないで下さい”とテロップが出るので、残念ながらネタバレはいたしません。
…ううう、喋りたい(笑)
ということで(;^^)、コメント欄ではネタバレは禁止しないことにいたしますので、もしこの映画をご覧になった方がいらっしゃいましたら、どうぞお話ししていって下さいませ。
どうです? このラストのテロップが興味をそそりませんか? (^m^)
暴力的な夫を憎む妻と愛人が共謀して夫を殺害する…というあらすじを読んだところで、「またどうせ、殺人が上手くいったと思ったら、最後は発覚してしまうという悲劇なのでしょう。」
と単純な結末を想像してしまいました。
シニョレって哀しい結末で終わる役が多いですよね、『嘆きのテレーズ』『肉体の冠』『帰らざる夜明け』等々…。
でも違うんですね~、事態が二転三転して、最後までどうなるのか分からない、そして結末が分かったと安堵しているところへ、追い討ちをかけるような“ひと言”で締めくくられ、「やられた!」という気分になりました。
でもそのラストが私にとっては最高に良い終わり方でスッキリです(^^)
ちょっと過激な言い方をすれば、“万事丸く収まった”といったところではないでしょうか。
この映画の権利をヒッチコックも狙っていたそうです。
動機やらストーリーは違うけれど、犯行後の犯人の心理描写が『ロープ』のふたりと似通っているように思えました。
とても巧妙なトリックですから、さぞかしヒッチコックも映画化したかったことでしょうね。
シニョレは愛人役なのですが、最初は妻の役だと思っていました。
妻役のヴェラがとても可憐で華奢で、しかも若そうに見えたので当然愛人だと…(;^^)
ふたりが犯罪を犯した後に起こる不可思議な現象も恐ろしかったけれど、妻が暴力的な夫から逃れられないという絶望感も私にとっては恐怖でした。
愛情の冷めた夫から、しかも暴力を振るわれ財産を狙っているとあからさまに宣言されている男性から逃れることができないなんて、考えただけでも身震いします(>_<)
現代でもそういう苦しみに耐えて暮らしている女性も多いと聞きます、お気の毒です…。
例えば、この物語の場合などは、男性が結婚後にガラリと豹変してしまったということですから、仕方がないわけですけれど、暴力を避ける防御が事前に出来る場合、女性は自分の身は自分で守る術、というか常識をもっと身につけないといけないですよね。
先日の“某お笑いタレントの暴行事件”とか“有名女医のお嬢さんの誘拐事件”とかを聞くにつれそう思います。
お話し戻りまして…
愛人役にシャロン・ストーン、妻役にイザベル・アジャーニというキャストでリメイク版(1996年)があるそうです。
特に、病身のか弱い妻にアジャーニというところがいいキャスティングだと思いますし、犯人を探し出そうとする元警部役にキャシー・ベイツという名優にもかかわらず、レビューを拝読すると、多くの皆さんに見るも無残にこき下ろされて可哀想でした(;^^)
それだけ、クルーゾー監督の本作が秀逸だということなのでしょう。
いつか私も、しかしあたたか~い目でそれを鑑賞したいと思います(笑)
こんばんは、ミカエラさん。
うんうん、しゃべりたくてむずむずするお気持ち、よくわかりますわ(^^ゞ。プロットが二転三転する作品って、なかなかネタバレできないものですよね…。私は思い切りしてますが(反省)。
「悪魔のような女」のリメイク版が酷評されてしまうのは、ある意味仕方がないと思いますよ。あの隙のない傑作を今更どのように料理しなおせばいいのか、わからないですもの。まあ、現代版としてはあれでいいんだと思います。ヒッチコックの「ダイヤルM」もリメイクされましたけど、オリジナルと比較するから評価も辛くなるわけで、全く別物の作品として観てあげたほうがいいように感じますね。リメイク版の「悪魔のような女」も「ダイヤルM」も、別個のサスペンスものとしてならおもしろかったです。
by 豆酢 (2006-07-29 21:56)
■豆酢さん、こんにちは♪
>>なかなかネタバレできないものですよね…。私は思い切りしてますが(反省)。
↑ 今回はラストに“ネタバレしないで”とテロップが出たので、生真面目に守ったのですよ~(;^^)
豆酢さんのレビューは、とても奥深い解説&トリビアつきですから、ラストにまで言及されていいと思いますし、それが魅力だと思います(^^)
>>全く別物の作品として観てあげたほうがいいように感じますね。
↑おお、さすが豆酢さん、リメイク版もご覧になったのですね。
私が尊敬するレビューアさんも、リメイク版に対して「単なるホラーです。」と一言で片付けてしまっていて…それをみたら、なんだか妙にお気の毒になってしまい、私は温かい目で観てあげようと思ったのでした(笑)
タイトルも、原題邦題とも全く同じというのも、いけないかも知れないですよね~。
例えば、私はジェジェ様の『危険な関係』が大好きなのですが、リメイクの『クルーエルインテンションズ』は、また違った趣がとても面白かったですし評判もいいですよね、まあ、内容も勿論秀逸なのでしょうけれど、タイトルからくるイメージも関係があると思うのです。
そう考えると、リメイク版『悪魔…』は挑戦的、とも取れますね~(;^^)
by ミカエラ (2006-07-31 09:30)
ミカエラさん、こんばんは~、お元気でお過ごしですか?
まだまだ暑い日が続きますが 今少しの辛抱・・と必死で耐えている毎日です。(~_~;
若い時は「夏大好き!」だったのに、そんな日々があったなんて信じられないほど夏が苦手になってしまいました・・涙。
もしもこの作品をヒッチコックが監督していたら また違った味わいだったでしょうねぇ~~、きっと面白く仕上がっていたと思われますよね。
でも私はシニョレが大好きということもあって 彼女の醸し出す重苦しくて残酷な悲劇の香りにすっかり酔わされてしまう癖があり クルーゾー作品で大満足です。
もちろんリメイクも観ていますよ、「ダイヤルM」もね。
これらは豆酢さんがおっしゃるとおり、本当に別ものとして楽しみました。
「悪魔・・」はシャロン・ストーンの映画だし(アジャーニは見る影もないし)、「ダイヤル・・」はヴィゴがセクシーで素敵だったけど 奇を衒い過ぎて結末も あちゃ~、やっちゃったわ~という印象が残っています。(苦笑)
古いものが あるいはオリジナルが必ずしも良いとは言えませんが それを超えてさらに魅力的な作品を作るのは難しいことなのだと認識させてくれたチャレンジでした。
ジェジェ作品のリメイクも それが当てはまりますよね~?
ま、ジェジェの作品に限っては きっとどんなに素晴らしいリメイクが出来上がってもそれを認めることは不可能ですけれど(~_~;
「危険な関係」のリメイクで一番好きなのは コリンには悪いけれど やはり「クルーエル・・」でした。
このライアン・フィリッペは 他の作品では観られないような哀愁が漂っていて素敵でしたね。
by カポ (2006-08-30 21:43)
■カポさん、こんにちは♪
コメントありがとうございます~、パソコンが故障してしまっていましてお返事が遅れてしまいました。
本当にすみませんでしたm(_ _)m
お!カポさんもシニョレのファンですか! それを聞いて私もファンになりました(笑)
少しずついろいろな作品を観ていくうちに私も段々と好きになりました。
最近観た中ではアラン・ドロンと共演の『帰らざる夜明け』がよかったですね~、ドロン演じる若い男性に恋してしまう初老の女性という役でしたが、ドロンに色目を遣う若い姪に嫉妬したりして、醜く哀しい性を感じさせるところが、現実的でちょっと辛かったです。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=4321
カポさんのお話をお聞きしますと、『悪魔…』も『ダイヤルM』のリメイクも、やっぱり駄目駄目みたいですね(;^^)
アジャーニは楽しみにしていたのですが残念です。
あ、でもヴィゴのセクシ~演技を見ることができるとは、それだけで見る価値あるかも(゜∀゜)!(邪鑑賞)
ジェジェ様作品のリメイクでは『危険…』の他に『花咲ける騎士道』がありますね~。
これは以前カポさんはお勧めだとおっしゃってましたね、しかしまだ観てません(;^^)
その他、リメイクとは違うのかもですが、モディリアーニを描いた『モディリアーニ 真実の愛』というのも、ジェジェ様の『モンパルナスの灯』と比べてみるのも楽しいかもですね。
しかし前者にはユトリロ、ピカソ、ジャン・コクトーとそうそうたる登場人物が出てくるようで凄いです(@_@)
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=322344
by ミカエラ (2006-09-12 14:50)