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本 『同性愛』 [本 *Books]

同性愛

同性愛

  • 作者: 小栗 虫太郎, クラウディオス アイリアノス, プブリウス ウェルギルス, 大沼 忠弘, ラシルド
  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 1999/04
  • メディア: 単行本


ラシルド著の『アンティノウスの死』が収められていたため購入したのですが、その他の短編集、詩、エッセイ、学術的なものまで載っていて、どれも興味深くて素晴らしい本でした。
以下は、特に印象に残った作品です。

* 恋の刺客 ―ハルモディオスとアリストゲイトーン― *  大沼忠弘
古代ギリシャのポリスにおける、少年愛(同性愛)が社会的にどのようなものであったのかがよく分かりました。
ハルモディオスとアリストゲイトーンという二人の青年&少年の恋愛悲劇の、事実から神話へと変わっていった過程を検証してゆきます。

* コリュドン ―ウェルギリウス『牧歌』より― *  河津千代 訳
羊飼いの少年コリュドンが、ご主人のお気に入りの美しい少年・アレクシスを想って歌った詩。
決して叶わない想いを切なげに、或いは優しく問いかけるように、しかし時には傲慢とも言える言葉を交えているところなど、少年らしくて可愛らしいです。

* アンティノウスの死 *  ラシルド
アンティノウスは、ローマの五大賢帝のひとり、ハドリアヌス帝に寵愛された美少年で、ナイル川で溺れて夭折してしまいました。
この作品は、皇帝とアンティノウスの対話形式となっていますが、皇帝の何かに怯えたような錯乱しているようなものの言い方に対して少年の慰めるような言い方から、少年が溺死した後に、皇帝が妄想で会話をしているもののようです。
皇帝の悲痛な叫びが伝わってきます、おいたわしや~(;。;)

* 白書 *  ジャン・コクトー  江口清 訳
詩人、小説家、映画製作も手がけた芸術家ジャン・コクトーが、自身の恋愛を赤裸々に語っています。
彼の経験は実にドラマチックで、それは神様が稀有な才能をさらに伸ばすために与えたものなのではないか?と思ってしまうほどでした。

* 岩津々志 *  北村季吟  須永朝彦 訳
奈良、平安時代から江戸時代まで、僧侶は美しい稚児を愛しむ習慣があり、僧門は同性愛を黙認していたそうです。
彼らの恋愛の小話と共に、恋心を詠った和歌も載っているのですが、和歌のほうは私には内容が分かりませんでした(;^^)
もう少し分かり易い訳を付けていただければ、もっと楽しめたと思います。
愛しい人へ想いを歌に詠んで贈り、返歌をしたという当時の習慣とはとても美しくて素敵だなと思いました。

* 義しき男われを嗣ぐべし *  相澤啓三
(多分)古代ギリシャにおける念者(若い男性を囲った成熟した男性)が、若者(その男性の若い恋人)が、さらに若い少年と寝ているところを見た様子を詠ったもの。
自分の恋人(若者)が少年と共に寝ている姿を見て、嫉妬に狂うどころか、彼にも自分がかつてそうしたように少年を教育せよ、という姿勢がなんと高潔なのでしょう!
若者が成長したことを悟った念者は、同時に自分にかすかな老いをも感じたのではないだろうかを思わせる哀愁も漂っています。

* 朝雲 *  川端康成
ある女性教師に想いを寄せる女学生のお話。
文章も登場人物も清々しくて美しく、読み終えてとても爽やかな気分でした。
…あれは恋だったのか憧れだったのか… 
自分自身にも問いかけたくなるような、どこか懐かしい香りのする物語です。

* 同性愛の経済人類学 *  栗本慎一郎
日本における同性愛の歴史から、世界中の例えばアフリカの○○族などの現状まで、幅広く知ることが出来ました。
その他、犯罪史上最も悪名高きジル・ド・レエについてのエピソードや精神分析も興味深かったです。

* 解題 *  須永朝彦
この本に収められている物語の簡単な解説の他、邦訳されている同性愛を扱った世界の主な作品を挙げて下さっています。
主なところでは…『ソドムの百二十日』 マルキ・ド・サド著
           『失われたときを求めて』 マルセル・プルースト
           『ヴェニスに死す』 トーマス・マン
           『知と愛』 ヘルマン・ヘッセ
           『モーリス』 E・M・フォースター


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コメント 10

迷い人

電化製品祭り中のため、今、気がつきました。
同性愛-----
私が知る範囲では、男と男が圧倒的に多いのです。
映画でも、たいてい男と男の愛が中心です。
私のような女性ユーザー向けかしらと、勘ぐったり。

私はクイーンのフレディがゲイだったので、彼を理解したくて、ゲイについてネットで勉強しました。
全然知らなかったので、驚くことばかり。
ゲイの知識が入ると、見えなかったものが見えるようになりました。
若い時に、この知識があったらと悔やまれるほどです。

私はゲイの人の悩み相談を読むのが好きなのです。(変態っぽい?)
リアルではまだ禁断の恋なのです。
ゲイでない男を好きになって苦しむ.....
そういう男の告白が生々しくズンときます。(やっぱり変態だわ~)
by 迷い人 (2006-01-06 14:06) 

ミカエラ

迷い人さん、こんばんは(^^)

>>映画でも、たいてい男と男の愛が中心です。
↑ 男性同士のものは大好きなんのですが、先日『秘密のかけら』という映画を観に行ったら、女性同士のシーンがありました。
私、女性同士の情事の場面はダメなんですよ~(;^^)
どんなに美人同士でも、見ていられないのです。
ということは、やはり、男性同士のそれが駄目というかたもいるのでしょうね。

>>私はクイーンのフレディがゲイだったので、彼を理解したくて、ゲイについてネットで勉強しました。
↑ お勉強熱心な迷い人さんに、この本はオススメですよ~(*^v^*)
ギリシアやローマ時代に同性愛が盛んであったということは知っていましたが、日本においてもかなり盛んで、しかも世界と比べて取締りがゆるかったという事実にとても驚きました。

>>電化製品祭り中のため、今、気がつきました。
↑ テレビを買われたのですよね、冬季オリンピックももうすぐですし、ワールドカップもあって楽しみですね♪
電化製品といえば…私も早く、リージョンフリーなDVDデッキを買わねば!
by ミカエラ (2006-01-06 22:02) 

TOMCAT

まぁ素敵なご本がございますのね。ご紹介ありがとうございます。

最近活字から離れているから、読もうかしら♪
ヴェルギリウスも買ったままうっちゃり~・・・何処だろう?
状態なので・・・笑

ところで、変なサイトをご紹介。
ここのゲイゲイしいCMってのがまた、面白い♪
http://allabout.co.jp/relationship/homosexual/

JPの文化とギリシアの文化は共通項が多いんですよね。
島国だからでしょうか?
一人パトロクロス祭り続行中でございます。
by TOMCAT (2006-01-08 15:20) 

ミカエラ

TOMCATさん、こんばんは♪

同性愛に関しての映画も良いですが、活字もなかなかエロティックなものですよね(*^^*)
短編集なので、飽きずに読むことが出来ました。
とてもよかったので、今度はこのシリーズの『美少年』というのを注文しました。

Gayムービーといえば、今度ヒース・レンジャーとジェイク・ギレンホールの『ブローク・バック・マウンテン』が公開されますね~。
あるサイト様で、キスシーンの映像を見てしまいましたわ(^m^)
そういうのは久々に観たので、かなりドキドキしてしまいました。

ところで、ゲイゲイしいCMのご紹介ありがとうございます!
オモシロCM大好きなんですよ~。
私はオチは別として、毒蛇に噛まれた編のがセクシーで気に入りました(^^)
それにしても、大手の車メーカーが揃いも揃ってこういうCMを作るとは驚きですね。

>>一人パトロクロス祭り続行中でございます。
↑ そういえば素敵だったパトロクロス!
TOMCATさん、いいところに目をつけられましたわ(感心)
私も『フォー・ブラザース』借りてきます、パトちゃん待っててね~♪
by ミカエラ (2006-01-09 02:45) 

TOMCAT

ええ、あれね。
普通しゃがみこむよとか、あんな山の中でも、Suck dickならバックに岩か木を使うよとか突っ込みどころは満載なんですけどね(笑)

息抜きに良いです。
BBM大分前から、ベネチアの賞をとる前から話題で、Mixiでも、海外在住の方や、そっち系の映画好きの方からも続々と情報が流れてきます。コミュニュティにも入ってます。
結構すでに本が出てて、読んでいますって人も多いんですけど英語なので、予備知識無く、上映をまつしか無さそうなTOMにゃんです。

パトロクロスはアキレスの幼馴染でしかも恋愛(かなり熱愛)の対象だったから、まぁ美人で無ければ!武勇にも優れてなければ!情け深くなければ!って先入観が既に出来上がっていたので、劇場で彼ギャレットを見たときに、拍子抜けしました。これじゃLoverBoyじゃん!って。
それなのに、全然Loverboyじゃなくて(涙)
ヘクトル引き回したくせに、これじゃ意味ないじゃない!!
と変に不満なキャスティング&ライティングでございました。
だからこそ、注目すべき、可愛いパトロクロス=ギャレットになってしまいましたの(笑)
縁って面白いですね!ってトロイも豆ちゃん見たさに行ったんですけどね。ナイジェルが出てるって知ったのは、DVD買ってからデス(T_T)

フォーブラザーズ、マークウォルバーグも良い味(彼本来の)出してました。公開が終わったばかりだから、DVDまでは4ヶ月ぐらいかかるかなぁ?
by TOMCAT (2006-01-10 07:58) 

ミカエラ

TOMCATさん、こんにちは(^^)

ブロークバック…は、随分前から話題だったのですね~(@。@)
そういえば、marsaさんもだいぶ前にブログで紹介されてましたね。
カナダの大自然の映像もとても綺麗だったし、互いに家庭を持ってからも長年にわたって想い合うという、純粋で壮大な設定が感動を呼びそうです。
私もあまり内容は知りませんが、この映画によって、同性愛の認識が世界中や日本でも大きく変わるといいですね(^v^)

>>縁って面白いですね!ってトロイも豆ちゃん見たさに行ったんですけどね。
↑ 私もそうですよ~、ホント、豆ちゃんのミニスカ姿…(違)、賢能な武将ぶりが素敵でした。
これを観て、『オデュッセイア』もどなたか映画化してくれないかしら~と思いました(T~T)

ナイジェルって、ナイジェル・テリーですね、『エドワードⅡ』でも見たはずなんですが、よく覚えてません(;^^)
『カラヴァッジオ』で豆ちゃんと共演なのですよね、彼ではないのですが、手元の写真集にデクスター・フレッチャーがバッカスの姿をした写真が載ってるんですけれど、とっても可愛いですね~(*^m^*)
by ミカエラ (2006-01-10 19:03) 

TOMCAT

そのまま叔父さんになってるのよ。フレッチャーさん。
もう、ホントそのまま(笑)
ナイジェルは神官・・鳥がうんちゃら発言の(笑)
アーサー王をやった頃のナイジェルはとても素敵でした@エクスカリバー
オデッセイアは映画がたんと、ございますよ。
JPでもTVで放映されたんです。
ただDVDがUKしか出てない版です。
http://www.amazon.co.uk/exec/obidos/ASIN/B0002TTT60/qid=1136987704/sr=2-2/ref=sr_2_27_2/203-9503428-0599150
いっぱい映像化されているんですけど、やっぱり新しい方が、絵が綺麗っす。
豆ちゃんでやって欲しいもんです。
by TOMCAT (2006-01-11 23:03) 

ミカエラ

TOMCATさん、こんばんは♪

>>そのまま叔父さんになってるのよ。フレッチャーさん。
↑ お写真見てみました…むむむ、ビミョーですね、
まあ、可愛いおじさまになってました…ということで(笑)
『カラヴァジオ』では、画家のモデルの役なんでしょうか、その画家とは愛し合う間柄だったりして♪(←独り妄想中)

『オデュッセイア』のDVDがあったのですね(@。@) ご紹介ありがとうございます。
フランシス・コッポラさんが製作だったり、女優陣はなかなか豪華キャスなのですね~。
国内版は、これでしょうか↓
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000AA7BRA/qid%3D1136992671/503-8004135-6144730

オデュッセイアはカリプソとのロマンスや、ペネロペのエピソードなど、艶っぽい面白いストーリーが満載なので、映画で是非観たいです、勿論豆ちゃん主演で。(夢~)
うちの近所のレンタルショップは割りとB級映画も揃っているので、もしあったら借りて見ます(^。^)
by ミカエラ (2006-01-12 00:26) 

TOMCAT

あらぁJPあるのね(笑)
良い映画ですよ。英語もそんなに難しくないし・・字幕は無かったかも・・
本を読もうと努力中(笑)ホメロスよりヴェルギリウスを先にしたいんですけど、時代は逆行になりますね。
やっぱりイーリアスから読み直すかな・・・

カラヴァッジオのフレッチャーさんは、枢機卿に拾われる頃のカラヴァッジオ役です。色っぽいですよ。ベッドシーンの後かな・・
お相手のおじちゃんをからかってるシーンがあります。
だから枢機卿がもうちょっと、色気があれば・・って思う程の設定だったら・・でも清貧の枢機卿だから、無理ですね。

もう一人カラヴァッジオの少年時代をやった子役さんが居て・・こいつが天使みたいな美少年です。若すぎますけど・・
by TOMCAT (2006-01-15 00:25) 

ミカエラ

TOMCATさん、こんにちは♪

>>本を読もうと努力中(笑)
↑ たくさん待機中の本があるのですね~、頑張って下さい(^^)
PCというか、HPやっていると本を読む時間が取れなくないですか? 
私の時間の使い方が悪いのかな~。
映画はよく見るんですけどね、実は私も読書はなかなか思うようにはかどりません。

>>カラヴァッジオのフレッチャーさんは、枢機卿に拾われる頃のカラヴァッジオ役です。色っぽいですよ。ベッドシーンの後かな・・
↑ べ、ベッドシーン!? 
そういえば迷い人さんだったか、Gay映画と仰ってましたね、でも、TOMCATさんは違うと仰ってましたっけ(笑)

以前はアマゾンになかったのに、今見たら置いてありましたわ!
もしかして安くなってるのかしら、後で買おうっと♪

画家の伝記的映画といえば、今度、マルコヴィッチ主演で『クリムト』(グスタフ・クリムト)をやるみたいですね~。
クリムトは好きだけど、マルコヴィッチさんが…(;^_^)
by ミカエラ (2006-01-15 17:29) 

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